BtoGとは?これから参入したい企業が知るべき基礎知識や特徴、メリットや手順・事例など解説
「BtoG(官公庁向けビジネス)に参入したいが、何から始めればよいかわからない」「民間企業への営業とは進め方が全く違うと聞き、不安がある」
このように感じているビジネスパーソンは少なくありません。
BtoGは、民間企業との取引とは異なり、独自のルールや意思決定プロセスが存在します。そのため、民間と同じ感覚で営業をかけても、なかなか成果にはつながりません。
本記事では、BtoGの基本概念から市場の魅力、他ビジネスモデルとの決定的な違い、そして実際に案件を獲得するための営業戦略までを体系的に解説します。
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目次(タップで開く)
BtoG(Business to Government)とは?基本概念と市場規模
BtoGの定義と対象となる行政機関(官公庁・地方自治体など)
民間企業が国や地方自治体といった行政機関に対して製品やサービスを提供し、対価を得るビジネスモデル のことを言います。
対象となる行政機関は、中央省庁、地方自治体、独立行政法人が挙げられます。
なぜ今、行政は民間企業の力を求めているのか?
これまで「行政=堅い、独自の世界」と思われがちでしたが、近年、行政と民間企業との距離は急速に縮まっています。
なぜ行政がいま、民間企業の力を必要としているのか。その背景には、行政機関が抱える「切実な課題」があります。
行政にとっての課題は、民間企業にとっては「解決すべきニーズ」であり、すなわち「ビジネスチャンス」そのものです。具体的には、主に以下の3つの要因が挙げられます。
・行政のDX推進
長年、行政の業務は紙ベースや対面手続きが主流でした。
しかし、人手不足や生産性向上の観点から、デジタル化(DX)が急務となっています。
民間企業が持つクラウド技術、AI活用、UX/UIデザインのノウハウは、行政サービスの利便性を劇的に改善するために強く求められています。
「行政のDXを支援できる」というだけで、多くの自治体から頼りにされる存在になれる可能性を秘めています。
・地方創生
少子高齢化や人口流出に悩む地方自治体にとって、地域経済の活性化は最大の命題です。
行政単独の政策では解決が難しくなっている今、民間企業のマーケティング手法やビジネスの視点を取り入れた「官民連携」が加速しています。
観光開発、移住支援、地域資源のブランド化など、民間企業の知見を活かして地域を動かすプロジェクトが全国で増えています。
・深刻な人手不足
公務員の数は削減傾向にある一方で、行政サービスの内容は複雑化・多様化しています。すべての業務を内部で完結させることは物理的に不可能です。
そのため、定型業務や専門知識が必要な業務を民間企業へアウトソーシングする動きが活発です。
これは企業側にとっては、安定した継続取引を獲得するチャンスであり、行政側にとっては「信頼できるパートナー」を確保できるwin-winの構造と言えます。
BtoGビジネスにおいて重要なのは「自社商品を売り込むこと」以上に、「行政がいま、どんな課題を解決したがっているのか?」という視点を持つことです。
ここを理解できれば、BtoGという巨大市場への参入障壁はグッと低くなるはずです。
参考:デジタル庁「自治体DX推進計画」
BtoGとBtoB・BtoCなど他ビジネスモデルとの決定的な違い
BtoGをBtoB・BtoCと比較すると以下のような違いがあります。
| 比較項目 | BtoG (対行政) | BtoB (対企業) | BtoC (対消費者) |
| 主な取引先 | 国・地方自治体 | 民間企業 | 一般個人 |
| 意思決定 | 組織・予算・法律に基づく | 担当者・決裁者の論理 | 個人の感情・ニーズ |
| 重視される点 | 公共性・公平性・実績 | 利益・効率・費用対効果 | 情緒・体験・利便性 |
| 収益性 | 安定(ただし利益率は限定的) | 高い(価格交渉の余地あり) | 変動が大きい(トレンドに左右) |
| 営業手法 | 入札・プロポーザル | 直接提案・展示会 | Web・SNS・広告 |
・BtoGの核は「公平性」
民間ビジネス(BtoB/BtoC)が特定のクライアントに対する「最適化」を競うのに対し、BtoGは「誰に対しても公平であること」が最優先されます。
・「儲ける」から「解決する」への転換:
BtoCやBtoBでは「選ばれるための差別化」が重要ですが、BtoGでは「仕様書にある課題をどれだけ正確に・安定して解決できるか」が評価の鍵となります。
企業がBtoGビジネスに参入する3つの強力なメリット
BtoGビジネスへの参入には、入札資格取得などの準備が必要ですが、一度その壁を乗り越えれば、民間ビジネスにはない強力なメリットを享受できます。
ここでは、多くの企業がBtoGに注目する理由を3つの観点で解説します。
1. 貸し倒れリスクゼロ・景気に左右されない安定収益
行政の予算は税金によって賄われており、民間企業のように「倒産して代金が支払われない」という貸し倒れリスクが極めて低いのが最大の特徴です。
また、景気に左右されにくいため、経済環境が厳しい時期であっても、公共事業や行政サービスへの支出は一定程度維持されます。
収益の柱としてBtoGを組み込むことで、会社の経営基盤を安定させることが可能です。
2. 圧倒的な「社会的信用」の獲得
行政の厳しい入札条件や仕様書をクリアし、業務を完遂したという実績は、対外的に高い信頼性を得るための証明となります。
「官公庁の案件を手がけている企業」という事実は、民間企業に対する営業活動においても強力な武器になり、特に新規取引先を開拓する際は、その実績が信頼のハードルを大きく下げてくれるでしょう。
3. 一度関係を構築できれば中長期的な継続取引が見込める
行政機関は「安定して業務を遂行できる売り手」を高く評価します。
一度実績を作り、行政側の業務フローを理解した信頼できるパートナーとして認められれば、次年度以降の更新案件や関連事業の入札など、中長期的な継続取引が見込めます。
単発ではなく、長く安定したお付き合いを行政機関とすることが出来、収益源を確保しやすいのがBtoGの大きな魅力です。

BtoGビジネスの課題・注意点
1.参入ハードル(入札参加資格の取得など)と複雑な手続き
BtoGビジネスは「誰でもすぐに開始できる」わけではありません。
多くの案件では、国や自治体が定める「入札参加資格」の取得が必要です。
特に国の中央省庁案件であれば「全省庁統一資格」が必要となり、書類の準備や申請には相応の手間と時間(数週間〜数ヶ月)がかかります。
まずは「自社がどの資格を取るべきか」を調査することからスタートしましょう。
2.提案から受注、資金回収(入金)までのリードタイムが長い
民間ビジネスのような「その場での決裁」は期待できません。
入札情報の公開から開札、契約締結、および代金の支払いに至るまで、行政特有の事務処理フローが存在します。
特に支払いに関しては、納品後の検査を経てからの支払いとなることが多く、キャッシュフローには余裕を持った計画が必要です。
3.飛び込み営業はNG?人柄よりも「実績」と「仕様書への適合」が重視される
行政には「公平性」が求められるため、特定の企業に対するえこひいき的な飛び込み営業は基本的に通用しません。
担当者の人柄で決まることはなく、行政が提示してきた要件に対して、自社がどれだけ正確かつ経済的に適合できるかが全てです。
BtoGにおける営業活動とは「人間関係を築くこと」ではなく、「要件に合致する提案資料を完璧に作成すること」を意味します。
BtoG特有の契約方法と「入札」の仕組み
BtoGビジネスの勝敗は、契約方式の理解から始まります。
公共調達の透明性や公平性を図るため、法制度に基づいた適正な手続きが定められています。まずは基本的な仕組みを攻略し、自社に適したアプローチを見極めましょう。
参考:財務省「公共調達の適正化について」
一般競争入札・指名競争入札の違い
競争入札は、行政が公平性と透明性を確保するために採用する主要な発注方式です。大きく分けて以下の2種類が存在します。
・一般競争入札: 資格を持つ全ての企業が参加可能です。参入障壁は低いですが、価格競争になりやすく、実績作りとして割り切る必要があります。
・指名競争入札: 行政側が指名した業者のみが参加できます。ある程度の実績が認められた企業が対象となるため、案件獲得の確度は高まります。
随意契約とは?(実績のない企業がまず狙うべき契約)
入札を行わず、行政が適当と認めた業者と直接契約を結ぶ方式です。「少額案件」や「特殊な専門性が求められる案件」で多く採用されます。
まずは小規模な随意契約から実績を積み、行政担当者に「信頼できるパートナー」として認知されることが、大きな入札案件へ繋がる登竜門となります。
プロポーザル方式(企画提案型)とは?
価格だけでなく、提案内容(企画力・技術力)を総合的に評価して業者を選定する方式です。
価格競争に陥りたくない場合や、自社の技術に強みがある場合に最適です。仕様書の裏にある課題を深く読み解き、「解決策」を提示する力が試されます。
【実践編】BtoG案件の探し方と営業・提案のコツ
案件情報の効率的な探し方(自治体HP、入札情報サービスの活用)
まずは「入札情報公開システム」や各自治体のHPをこまめにチェックしましょう。無料の検索サービスを活用し、自社の業種やエリアに合わせたキーワードでアラート登録しておくのが効率的です。
【重要】自治体の「予算編成スケジュール」を逆算したアプローチ手法
行政は「予算」で動きます。
例として、国の予算は「前年の夏〜秋」に要求・編成され、翌4月に確定します。
そのため、案件が出てくるのを待つだけでなく、予算が編成される前の時期に、担当部署へ「どのような技術があるか」を伝えるヒアリングの機会を持つことが、理想的な案件を生み出すコツです。
小規模案件や「実証実験」から着実に実績を積み上げる
最初から大型案件を狙うのではなく、数万円〜数十万円規模の小規模案件や、期間限定の「実証実験」案件に応募しましょう。
行政側もリスクの低い小規模案件で実績を作り、信頼を積み重ねた業者を優先する傾向があります。
仕様書を読み解き、行政の「課題解決」に寄り添う提案を行う
仕様書は「何をしてほしいか」の指示書であると同時に、「どこに困っているか」という課題のリストです。
仕様書を熟読し、担当者が抱える「真の悩み」に寄り添った解決策を提案してください。
BtoGビジネスを成功に導く「社内体制」の作り方
全省庁統一資格や各自治体の入札参加資格の取得
まずは全省庁統一資格の申請から始めましょう。
手続きはオンラインでも可能ですが、慣れるまでは行政の窓口へ電話で問い合わせながら進めるのが確実です。
参考
調達ポータル「全省庁統一資格について」
専任チームの組成と、法務・営業の連携フロー構築
BtoGの書類作成は独特のルールがあり、ミスが許されません。
可能であれば入札対応の専任担当を置き、法務チェックができる体制を整えましょう。
「入札担当、法務チェック、最終決裁」のフローが確立できれば、スピーディーかつミスのない応札が可能になります。
BtoGビジネスの成功事例:自治体が公式に報告しているDXの成果
行政機関が公式に公開している「自治体DX推進事例集」から、民間企業の知見や技術が大きく貢献した成功モデルを紹介します。
事例1:AI活用による児童相談業務の高度化と効率化
東京都江戸川区では、児童相談業務にAI技術を導入しました。
AIが通話内容に応じたマニュアルを即時提示するほか、発話内容をリアルタイムで分析することで、スーパーバイザーによる即時支援体制を強化しています。
この取り組みにより、複雑化する相談業務における対応品質の向上と、職員の負担軽減を同時に実現しています。
(出典:総務省 地域DXポータルサイト 児童相談業務にAIを活用し相談業務の強化と関連業務の効率化)
事例2:香川県土庄町におけるマイナンバーカードを活用した勤怠管理の効率化
香川県土庄町では、マイナンバーカードの空き領域を活用し、入退室・出退勤管理システム用のアプリケーションを搭載しました。
このシステムを既存の庶務システムと連携させることで、出退勤情報や時間外勤務申請、休日出勤の情報を一元管理しています。
これにより、勤怠管理業務のデジタル化と効率化を達成しました。
(出典:総務省 地域DXポータルサイト 出退勤、入退室の管理にマイナンバーカードを活用し紙の記録簿や鍵の管理を廃止)
よくある質問(FAQ)
Q1. 実績のない中小企業でもBtoG市場に参入できますか?
A.はい、参入可能です。
最初は実績が問われにくい「少額の随意契約」や「オープンカウンター案件」、「実証実験」などの小規模案件からスタートして実績を作るのが有効です。また、大手企業のパートナー(下請け)として参画するのも実績づくりの近道となります。
Q2. 入札参加資格はどのように取得すればよいですか?
A.国(中央省庁など)の案件であれば「全省庁統一資格」をインターネット経由で一度に申請できます。
地方自治体の場合は、各自治体ごとに個別の申請手続き(入札参加資格審査)が必要となるため、参入したい自治体のWebサイト等で申請時期や要件を確認しましょう。
Q3. BtoGでの営業活動で注意すべきポイントは何ですか?
A.個別の熱烈な売り込みや接待・アピールなどの「情念型営業」は逆効果となります。
行政は公平性を重視するため、提示された「仕様書(要件)」を正確に読み解き、課題に対して確実かつ客観的に応えられる提案書を作成することが何より重要です。
Q4. 案件情報を効率的に収集するにはどうすればよいですか?
A.官公庁や各自治体の広報・入札情報ページを定期確認するほか、民間の「入札情報検索サービス(NJSSなど)」を活用すると、全国の案件を一括検索・アラート設定できるため非常に効率的です。
まとめ:中長期的な視点でBtoGという巨大市場を開拓しよう
BtoGビジネスは一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、一度信頼を獲得すれば、他社が簡単には参入できない強力な「安定収益の基盤」となります。
「社会に貢献する」という視点を持ち、地道に実績を積み重ねることで、あなたの会社は行政にとって欠かせないパートナーへと成長できるはずです。まずは小さな案件から、第一歩を踏み出してみましょう。
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