【図解】随意契約とは?一般競争入札との違いやメリットデメリット、受注の5ステップや地方自治体法などわかりやすく解説
国や地方自治体といった公的機関との取引(公共調達)に関心を持つ企業にとって、「随意契約(ずいいけいやく)」は極めて重要かつ魅力的な契約方式です。
「入札を経ずに直接受注できるのか?」「自社でも随意契約で案件を獲得できるのか?」といった疑問を持つ営業担当者や事業者様に向けて、本記事では随意契約の基礎知識から法的根拠、競争入札との違い、種類、そして民間企業が実際に受注を獲得するための実践的ステップまでを徹底解説します。
目次(タップで開く)
1. 随意契約とは?基礎知識と仕組みをわかりやすく解説
1-1. 随意契約の定義と「競争入札」との根本的な違い
随意契約とは、国や自治体などの公的機関が、競争入札(一般競争入札・指名競争入札)を実施せず、特定の事業者を選定して直接契約を締結する方式を指します。
公的機関による調達は、国民・住民の税金によって賄われます。
そのため、公平性や経済性を確保する観点から「原則は競争入札」と定められています。
随意契約は、あくまで一定の合理的な理由がある場合にのみ認められる「例外的な調達手続き」という位置づけです。
1-2. なぜ例外的に随意契約が認められるのか?
すべてを競争入札にしてしまうと、公的機関の業務運営や住民サービスに支障をきたす場面が生じます。例えば、以下のようなケースです。
・技術や設備の唯一性
特定の企業しか持たない特許技術や専門設備が必要な場合
・緊急性
災害対応やシステムの緊急復旧など、入札公告や開札の時間を待てない場合
・事務の効率化(少額調達)
少額の消耗品購入や軽微な修理まで毎回入札を行うと、かえって事務コストが膨らむ場合
このように、「競争に付すことがそぐわない」あるいは「競争に付すと発注者側に著しく不利になる」場合に随意契約が適用されます。
1-3.随意契約の法的根拠(会計法・地方自治法施行令)
随意契約は行政の恣意的な判断で行われないよう、法律および政令で厳格に要件が定められています。
国の機関(省庁等)の法的根拠
・会計法第29条の3第4項
「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。」
・会計法第29条の3第5項
「契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第一項及び第三項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。」
・予算決算及び会計令第99条
「会計法第二十九条の三第五項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。」
同条第2号では、次のように定められています。
「予定価格が四百万円を超えない工事又は製造をさせるとき。」
また、同条第7号では、次のように定められています。
「工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約でその予定価格が二百万円を超えないものをするとき。」
引用:・会計法第29条の3
地方自治体(都道府県・市区町村)の法的根拠
・地方自治法第234条第2項
「前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」
この規定により、地方自治体が随意契約を行えるのは、政令で定められた場合に限られます。
・地方自治法施行令第167条の2第1項
「地方自治法第二百三十四条第二項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。」
同項では、随意契約ができる場合として、次の9つの事由を定めています。
→第1号(少額随意契約)
「売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。」
→第2号(性質・目的による随意契約)
「不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。」
→第5号(緊急随意契約)
「緊急の必要により競争入札に付することができないとき。」
→第8号(不落随意契約)
「競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。」
→第9号(不調随意契約)
「落札者が契約を締結しないとき。」
なお、第3号・第4号・第6号・第7号にも、それぞれ随意契約が認められる場合が定められています。
引用:・地方自治法第234条
2. 随意契約の主な種類・区分
2-1. 少額随意契約(少額随契)
契約金額が一定の基準額以下である場合に認められる随意契約です。
手続きの簡素化・事務コスト削減を目的としています。
国の「予算決算及び会計令第99条」や、地方自治体の「地方自治法施行令別表第5」により、契約の種類ごとに上限額が設定されています。
- 国の基準(予決令第99条):予定価格250万円以下の工事・製造など
- 自治体の基準(地方自治法施行令別表第5に基づく上限の例):
- 工事・製造の請負:200万円以下
- 財産の買入れ(物品購入など):150万円以下
- 役務の提供(業務委託など):100万円以下
※自治体ごとに財務規則でこれ以下の独自の基準額を定めている場合もあります。また、少額随意契約であっても、基本的には2者以上からの見積書徴取(見積合わせ)が求められます。
2-2. 企画提案型随意契約(公募型プロポーザル・企画コンペ方式)
価格の安さだけでなく、事業者の技術力、ノウハウ、提案内容を総合的に評価して最適なパートナーを選ぶ方式です。
公募型プロポーザルなどで最優秀提案者に選ばれた事業者と、後から1対1の随意契約(地方自治法施行令第167条の2第1項第2号など)を締結する流れをとります。Webシステム構築、地域活性化事業、広報戦略業務などで広く活用されています。
参考:
・国土交通省|公共工事等におけるプロポーザル方式の運用について
・内閣府(民間資金等活用事業推進室)|PPP/PFI事業における民間提案制度運用ガイドライン
2-3. 不落随意契約(不落随契)
一般競争入札や指名競争入札を実施したものの、参加者の入札価格が発注者の設定した「予定価格」に達しなかった(不落)、または入札者が誰もいなかった(不不落)場合に行われる随意契約です。
予決令第99条の2や地方自治法施行令第167条の2第1項第8号に基づき、「当初の入札条件(予定価格や履行期限など)を変更しないこと」を前提に、最低価格を提示した入札者などと直接交渉して契約を締結します。
2-4. その他の特殊な随意契約(緊急随契・特許随契など)
・緊急随意契約(地方自治法施行令第167条の2第1項第5号など):災害復旧やインフラ設備の突発的故障など、競争入札を待つ時間的余裕がない場合。
・特定随意契約(同第2号など):特定のメーカーしか供給できない特許製品の購入や、著作者への直接委託など、履行できる相手が物理的に1社しか存在しない場合。
3. 随意契約と「一般競争入札」「指名競争入札」の徹底比較
調達方式ごとの違いを理解するために、主要な3つの契約方式を比較します。
3-1. 一般競争入札との違い(参加資格・公平性・手続き期間)
・一般競争入札:公告を出し、必要な参加資格(全省庁統一資格や自治体格付など)を満たす企業であれば誰でも参加できる方式です。最も公平で透明性が高く、公的機関の「原則」とされています。ただし、公告から開札・落札までに1〜2ヶ月程度の期間を要します。
・随意契約:特定の企業と直接交渉して決定するため、手続きが極めてスピーディーです。一方で、選定理由の明確化と透明性の確保が課題となります。
3-2. 指名競争入札との違い(選定方法・透明性)
・指名競争入札:発注側があらかじめ指名基準に基づき複数社(通常5〜10社程度)を指定・指名し、その指定された企業同士で価格を競わせる方式です。
・随意契約:単一の事業者と交渉を行う「一者随契」や、特定の数社から見積もりを集める「見積合わせ」を行い、競争入札のような厳格な入札手続きを行わずに契約者を決定します。
3-3. 【詳細比較表】契約方式別の特徴・メリット・デメリットまとめ
| 比較項目 | 一般競争入札 | 指名競争入札 | 随意契約 |
| 参入ハードル | 資格を満たせば誰でも参加可能 | 発注者からの指名が必要 | 実績や独自の強み・条件合致が必要 |
| 決定基準 | 主に「価格の安さ」(総合評価方式も有) | 主に「価格の安さ」 | 価格・技術力・専門性・緊急性など |
| 手続きスピード | 時間がかかる(1〜2ヶ月) | 中程度(数週間) | 非常にスピーディー |
| 透明性・公平性 | 極めて高い | 中程度(指名基準の透明性が問われる) | 公表義務はあるが厳格な事前説明が必要 |
| 受注者の利益率 | 価格競争により低下しやすい | 価格競争により低下しやすい | 適正価格・適正利益を確保しやすい |
4. 発注者・受注者それぞれのメリット・デメリット
4-1. 発注者(官公庁・自治体)のメリット・デメリット
発注者のメリット:
- 入札公告や審査にかかる時間とコストを大幅に削減できる。
- 信頼できる実績豊富な業者や、高度な技術・専門ノウハウを持つ企業を確実に選定できる。
発注者のデメリット:
- 「特定業者との癒着」「出来レース」といった疑念を持たれやすいため、厳格な「随意契約理由書」の作成と公表が義務付けられる。
- 価格の比較・競合が働きにくいため、高値掴みのリスクがある。
4-2. 受注者(民間企業)のメリット・デメリット
受注者のメリット:
- 過度な安値競争(叩き合い)に巻き込まれにくく、適切な粗利益率を維持しやすい。
- 自社の強みや提案力(プロポーザル等)をダイレクトに評価してもらえる。
受注者のデメリット:
- 新規参入の場合、発注側に自社の存在や強みを知られていなければ声がかからない。
- 「随意契約公表情報」として、契約金額や自社名、選定理由が自治体等のWebサイト上で一般公開される。
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5. 民間企業が随意契約を獲得(受注)するための具体的な5つのステップ
新規参入の民間企業が随意契約を獲得するためには、単に待っているだけでは依頼は来ません。戦略的なアプローチが必要です。
5-1. ステップ①:全省庁統一資格・自治体の入札参加資格の取得
随意契約であっても、公的機関と契約を結ぶ以上、行政の「入札参加資格者名簿」に登録されていることが原則的な前提条件となります。
まずは国の機関であれば「全省庁統一資格」、狙う自治体であれば各自治体の「入札参加資格審査」を申請・取得しておきましょう。
5-2. ステップ②:自社にしかない強み・独自性の言語化
発注担当者は、随意契約を結ぶ際に「なぜこの会社でなければならないのか」を説明する文書(随意契約理由書)を作成し、内部監査や住民の目に耐えうる根拠を残す必要があります。
「特許」「特定機器の正規代理店」「地域唯一の施工実績」「独自の専門ノウハウ」など、発注担当者が理由書を書きやすいエビデンス(証明資料)を準備しておくことが極めて重要です。
5-3. ステップ③:官公庁・自治体への事前アプローチ
本発注(告示)が行われる前の段階で、行政が仕様書を作成するために実施する情報提供依頼や民間提案制度に積極的に参加しましょう。
自社の技術や製品情報を事前に提供しておくことで、行政側の仕様書に自社の強みが反映され、その後の公募型プロポーザルや随意契約の打診に繋がる可能性が高まります。
5-4. ステップ④:少額随意契約やプロポーザルで小規模な実績を作る
官公庁取引において最も重視されるのは「公的機関での履行実績」です。
いきなり大型案件を狙うのではなく、金額基準の低い少額随意契約やオープンカウンター(公開見積合わせ)、比較的小規模な公募型プロポーザルに挑戦し、まずは「行政との取引実績」を作ることが信頼獲得への近道です。
5-5. ステップ⑤:発注予定情報・過去の公示情報を徹底追跡する
自治体や国は、毎年4月〜5月頃にその年度の「発注予定情報」を公表します。
また、過去に「どの企業が・いくらで・どのような理由で」随意契約を結んだかもホームページ等で公開されています。
過去データを分析し、「現行契約の更新時期」や「新しい予算事業の発注時期」を事前には把握してアプローチをかける体制を整えましょう。
6. 随意契約の不正防止と透明性確保のためのルール
6-1. 随意契約情報の公表義務(見直しと監視の目)
公共調達の適正化を目的とした財務省の「公共調達の適正化について」等のガイドラインに基づき、一定金額以上の随意契約については、「契約相手方の名称」「契約金額」「随意契約によった理由」をWebサイトで公開することが徹底されています。
財務省通達・ガイドラインのポイント: 単に「業務に精通しているから」といった抽象的な理由は認められず、具体的な専門性や不可避の理由を明記しなければならないとされています。
6-2. 「出来レース」「癒着」を防止するための取り組み
各自治体や省庁では、外部有識者による「入札監視委員会」を設置し、随意契約が適切に行われたかを事後検証しています。
事業者側としても、公務員に対する倫理規定やコンプライアンス(入札談合等関与行為防止法など)を十分に理解し、透明性のある公平な取引姿勢を保つことが求められます。
参考:
7. 随意契約に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 「少額随契」の金額基準は全国共通ですか?
A. 全国共通ではありません。
国(予決令)と地方自治体(地方自治法施行令)で政令の上限額が分かれており、さらに各自治体が自頭の「財務規則」で上限額を独自に定めています。
例えば、同じ物品購入でも自治体によって「80万円以下」としている場合や「150万円以下」としている場合があるため、対象自治体の規則確認が必要です。
参考:
Q2. 新設法人や官公庁実績ゼロでも受注できますか?
A. 受注可能です。
ただし、実績がない状態での一者指名は難しいため、自社独自の高度な技術・サービスを活かした「公募型プロポーザル」に応募するか、少額随意契約の見積合わせ(オープンカウンター)から参加して実績を作っていく戦略が有効です。
Q3. 随意契約の理由は一般に公開されますか?
A. 原則として公開されます。
会計法や地方自治法の透明性確保の観点から、契約金額や選定理由(随意契約理由書)は公的機関のWebサイト等で閲覧できるようになっています。
誰が見ても納得できる正当な選定理由が必要です。
Q4. 見積書は1社だけ(単独見積)で良いのですか?
A. 特殊な場合を除き、原則として2者以上からの相見積もりが必要です。
予定価格が非常に低い場合や、技術的唯一性により「世の中に1社しか存在しない」場合などを除き、随意契約であっても経済性確保のため複数の事業者から見積もりを取る「見積合わせ」が原則義務付けられています。
8. まとめ:随意契約を正しく理解し、BtoGマーケティングを成功させよう
随意契約は、単なる「特別扱い」ではなく、法令に基づいた合理的な調達システムです。
- 原則は競争入札、随意契約は例外的な措置であることを理解する
- 自社独自の強み(特許、専門性、地域性など)を言語化し、行政にアプローチする
- 発注予定や過去の公示情報をいち早く察知する情報網を構築する
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