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2026/09/11 コラム

自治体予算編成のスケジュールとは?営業担当者が知っておくべき年間フローと動くべきタイミング、種類など解説

自治体予算編成のスケジュールとは?営業担当者が知っておくべき年間フローと動くべきタイミング、種類など解説

「提案の反応は悪くなかったのに、なぜか話が進まない」「『今年度は予算がない』の一言で終わってしまった」。自治体向けの営業をしていると、一度はこうした壁にぶつかるのではないでしょうか。

実際のところ、内容が悪かったわけではないケースは少なくありません。原因の多くは、提案そのものよりもタイミングにあります。自治体は民間企業とはまったく違うリズムで1年間の予算を組み立てており、そのリズムを知らずに動くと、どれだけ良い提案でも「もう決まってしまっている」枠に届かないのです。

この記事では、自治体予算がどう組まれていくのかという年間の流れ・スケジュールと、それを支える制度上の原則を追いながら、営業担当者が実際に何月に何をすればいいのかまで、できるだけ具体的に書いていきます。

目次(タップで開く)

    首長マガジンの担当者は、自治体特有の意思決定プロセスや、部署ごとの温度感の違いを日々の業務で把握しています。自己流で手探りするより、実際に自治体営業の現場を知る人に一度話を聞いてみませんか。 

    首長マガジンとは
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    自治体の予算は、何のために組まれるのか

    自治体予算とは、1年間で入ってくるお金(歳入)と、それをどこに使うか(歳出)をあらかじめ決めておくものです。住民税や国からの交付金を財源に、福祉や教育、道路整備、防災といった行政サービスに配分していきます。

    参照:桜井市「令和8年度の予算・主な施策内容

    ここで押さえておきたいのは、民間企業の予算とは目的も性質もまったく違うという点です。企業の予算は利益を伸ばすために組まれ、状況が変われば途中で見直すこともできます。一方、自治体の予算は税金という公のお金の使い道を住民に約束するものなので、原則として「予算に載っていないことはできない」という強い制約がかかります。

    なぜそこまで厳格なのか。それは、自治体予算が単なる社内文書ではなく、法律によって定められた一連の原則に基づいて組まれているからです。この点は、企業の予算とのもうひとつの大きな違いにもつながっています。企業であれば、期中に新しい事業機会が見つかれば、稟議さえ通れば比較的すぐに予算を動かせます。

    しかし自治体では、そうした柔軟な対応ができる場面はごく限られており、多くの場合は次の年度の予算編成を待つことになります。営業する側からすると、この違いを頭に入れておくだけで、「なぜ今すぐ決められないのか」という担当者の反応に対する見方が変わってくるはずです。次の章で、その原則を具体的に見ていきます。

    自治体予算の基本原則

    自治体の予算には、地方自治法に基づくいくつかの原則があります。どこまでを独立した原則として数えるかは自治体によって幅がありますが、首長マガジンを発行している全力優の地域パートナー事業部では、日々の自治体営業のなかで特に総計予算主義の原則・会計年度独立の原則・予算の事前議決の原則の3つを重視しています。この3つを押さえておくだけで、「なぜ自治体営業はこのタイミングでしか動けないのか」という理由の大半が見えてくるためです。

    総計予算主義の原則

    その年度のすべての収入・支出は、相殺せずにそのまま歳入歳出予算へ計上しなければなりません(地方自治法第210条)。この原則のおかげで、ある事業にいくらのお金が動いているかを予算書から追うことができます。

    参照:地方自治法第210条

    会計年度独立の原則

    ある年度の歳出は、その年度の歳入で賄わなければなりません(同法第208条第2項)。今年度の収入で今年度の支出を賄うのが原則であり、次年度の収入をあてにして今年度の事業を前倒しする、といったことはできません。

    参照:地方自治法第208条第2項

    予算の事前議決の原則

    予算は年度が始まる前に、必ず議会の議決を経なければなりません(同法第211条第1項)。民間企業のように「決裁が下りたその日から動ける」という柔軟さは自治体にはなく、これが営業活動を年間スケジュールに合わせて計画すべき最大の理由になっています。

    参照:地方自治法第221条第1項

    弊社地域パートナー事業部の経験上、日々の営業活動のなかで、なかでも事前議決の原則を意識する場面が多いと感じています。「年度が始まってから慌てて提案しても遅い」という一点だけ押さえておけば、動き方の判断がぶれにくくなります。 

    自治体予算の種類

    同じ「予算」でも、組まれるタイミングによって性格がかなり違います。営業活動を考えるうえでも、この違いは知っておいて損はありません。

    当初予算

    もっとも基本になるのが当初予算です。前述の予算単年度主義に基づき、年度が始まる前に1年分をまとめて組む予算で、編成できるのは年に一度きり。前年度の秋から冬にかけて中身が詰められ、3月の議会で正式に決まります。大半の事業はこの当初予算をもとに動くため、自治体営業でもっとも重視すべき予算枠はここになります。逆に言うと、当初予算に載らなかった提案は、次の機会が来年度の当初予算まで先延ばしになるか、後述する補正予算の枠を待つことになります。

    補正予算

    年度の途中で急に必要になったお金に対応するのが補正予算です。災害対応や国の交付金への対応など、当初予算では見込めなかった事情に応じて、必要な都度組まれます。3月・6月・9月・12月の議会に合わせて提出されることが多く、なかでも9月は上半期の執行状況を踏まえた補正が動きやすい時期として知られています。当初予算のタイミングを逃してしまった企業にとって、補正予算は次のチャンスになり得ます。

    暫定予算

    当初予算が年度開始までに間に合わなかったときの”つなぎ”として組まれるのが暫定予算です。会計年度独立の原則がある以上、予算が決まらないまま新年度を迎えるわけにはいかず、職員給与や最低限の行政運営費など、生活に直結する支出に限って暫定的に組まれます。新しい事業への予算はほぼ期待できず、首長や議会の選挙と重なる年度に発生しやすい予算です。

    自治体予算編成のスケジュールを紹介

    当初予算は、執行される年度のおよそ1年前から検討が始まっています。事前議決の原則がある以上、年度開始前に議会の議決を終えておく必要があり、そこから逆算して1年がかりのプロセスが組まれているのです。時期はあくまで目安で、自治体ごとに前後します。

    参照:中央区「予算編成の流れ」船橋市「令和8年度予算編成過程公表について

    歳入見通しの試算・事業検討(4〜8月)

    年度が始まって間もない4月から8月頃にかけて、財政部門が税収や交付金などの次年度の見通しを試算します。並行して、各事業部門も5月あたりから次年度に何をやるか情報収集を始め、8月のお盆前くらいまで検討を続けます。

    予算編成方針の提示・予算要求(9〜10月)

    9月から10月にかけて、首長が「来年度はどこに力を入れるか」という予算編成方針を各部署に示します。この方針を受けて、各部署は見積もりや仕様書などをそろえた予算要求資料を財政部門に提出します。

    財政部門による査定(10〜12月)

    10月から12月は、財政部門による査定の時期です。要求された内容を一つひとつヒアリングしながら精査し、優先順位をつけていきます。総計予算主義の原則により、要求された事業の歳入・歳出は個別に計上する必要があるため、査定作業自体もかなり緻密なものになります。

    首長による最終決定(12〜1月)

    この査定を経て12月から1月にかけて首長が最終的な予算案を固めます。査定でいったんカットされた事業が、ここで復活することもあります。

    議会での議決(2〜3月)

    そして2月から3月、議会に予算案が提出され、審議と議決を経てようやく正式に成立します。事前議決の原則により、この議決は年度開始(4月1日)より前に終えている必要があります。

    こうして並べてみると、実際に発注される事業の”タネ”は、執行される年度のほぼ1年前、それも5月から8月あたりにはもう動き出していることがわかります。「予算が固まってから提案しよう」というのは、この流れで見ると、実質的にはもう遅いタイミングです。

    なお、この一連の流れは市区町村を念頭に置いた一般的な例であり、都道府県や政令指定都市では規模の大きさから査定に関わる部署や段階がさらに細分化されていることもあります。自治体の規模によって「誰が」「どの段階で」関わるかは変わってくるため、対象とする自治体の規模感に応じて、この年間フローを目安として調整して捉えるのがよいでしょう。

    予算編成から読み解く「自治体の重要施策(何に注力するのか)」の見つけ方

    年間スケジュールが分かっても、「その自治体が来年度どこに力を入れようとしているか」が分からなければ、提案の的は絞れません。ここでは、自治体が何を重要施策と位置づけているかを読み解くための、2つの視点を紹介します。

    重要施策は「総合計画」と「首長マニフェスト」

    自治体の重要施策のよりどころとなるのが、「総合計画」と「首長マニフェスト」の2つです。

    総合計画は、その自治体が中長期的にどこを目指すかを示す最上位の計画で、多くの自治体では基本構想・基本計画・実施計画という階層構造になっています。基本構想が10年前後の長期的な方向性、基本計画がそれを実現するための分野別の方針、実施計画が向こう数年の具体的な事業に対応しており、実施計画に近づくほど、次年度の予算に反映される可能性が高い内容になっていきます。

    首長マニフェストは、首長選挙の際に掲げられた公約です。当選後は、この内容が予算編成方針や総合計画の見直しに反映されていくことが多く、特に就任から数年以内の首長であれば、マニフェストに掲げたテーマへの予算配分が優先されやすい傾向があります。総合計画とあわせて確認しておくと、「なぜこの時期にこの分野が重視されているのか」という背景まで理解したうえで提案できます。

    参照:船橋市「船橋市総合計画」つくば市「市長公約事業のロードマップ」刈谷市「「元気・笑顔・希望のまちづくり」ロードマップ

    時流の変化をキャッチする

    総合計画やマニフェストが自治体独自の中長期的な方向性を示す一方で、国の政策動向や社会情勢の変化も、翌年度以降の予算配分に大きく影響します。国が新しい交付金制度を創設した分野や、他の自治体で先行事例が増えている分野は、翌年度の予算編成方針のなかで重点分野として取り上げられやすくなります。

    こうした時流を把握するには、国の関連省庁が公表する予算概算要求や交付金の公募情報、業界紙・専門メディアでの他自治体の動向、近隣自治体や同規模自治体での導入事例などが手がかりになります。総合計画やマニフェストが「その自治体固有の方向性」だとすれば、時流の変化は「多くの自治体に共通して働く追い風」です。両方を掛け合わせて見ることで、「その自治体が、なぜ・いつ、この分野に予算をつけそうか」の解像度が上がります。

    自治体営業が月ごとに何をすべきか

    ここからが本題です。先に言ってしまうと、自治体営業でもっとも重要なのは7〜9月の”仕込み”期であり、それ以外の月にも、それぞれ意味のある動き方があります。ここまでの流れを踏まえて、営業担当者として実際に何月にどう動くべきかを整理します。

    自治体営業 年間カレンダー

    時期自治体側の動き営業側のアクション
    46新年度スタート人事異動・組織改編情報収集・関係構築(新担当者の把握、6月議会のチェック)
    79各部署が次年度事業の検討を本格化次年度予算への仕込み(参考見積・仕様書たたき台の提供)(最重要)
    910予算編成方針の提示・予算要求資料の提出予算要求に合わせた後押し(要求書への反映を確認)
    1012財政部門による査定財政査定期の動き方(費用対効果の説明材料を用意)
    121首長による最終決定(査定復活も)首長査定・内示への備え(必要に応じ追加情報を提供)
    23議会での審議・議決、予算成立予算案公表後の初動(いち早く公表情報をキャッチ)
    随時補正予算・交付金の審議(3・6・9・12月議会)補正予算・交付金の動きを継続的に追う

    ここからは、上の表をもう一段掘り下げて、特に重要な時期を中心に 具体的な行動を見ていきます。 

    4〜6月:情報収集・関係構築

    自治体側では新年度が始まったばかりで、人事異動や組織改編が続く時期です。担当窓口が変わっていることも多いので、まずは新しい担当者や部署の把握が最優先になります。6月議会での一般質問や答弁を見ておくと、その自治体がいま何を課題視しているかが見えてきます。ここで作った接点が、次の”仕込み”の時期に効いてきます。

    7〜9月:次年度予算への仕込み

    自治体営業でいちばん重要な時期であるのが7〜9月です。理由は単純で、この期間はまさに各部署が次年度の事業を検討している最中だからです。この段階で自社の提案が担当者の頭の中に入っていなければ、9〜10月の予算要求書に反映される可能性はかなり下がってしまいます。参考見積もりを出す、仕様書のたたき台を一緒に作る、といった動きが有効です。

    もう少し具体的に言うと、この時期の事業部門の担当者は、社内で「来年度、この事業をやる意味があるのか」を説明できるだけの材料を集めています。他自治体での導入実績、費用対効果の試算、他社との比較材料といった、担当者が上司や財政課への説明資料として転用できる情報を提供できるかどうかが、この時期の提案の成否を分けます。単なる製品紹介ではなく、担当者が”庁内稟議を通すための材料”を渡すという意識で臨むと、要求書への反映率が変わってきます。

    9〜10月:予算要求に合わせた後押し

    各部署が予算要求資料を財政部門に提出する時期です。ここまでに関係が作れていれば、要求書のなかに事業として盛り込まれているはずです。同時に9月議会の補正予算の動きも見逃せません。

    10〜12月:財政査定期の動き方

    財政部門による査定が進む時期です。要求した予算が実際にどこまで通るかが決まっていくので、事業部門だけでなく、査定を行う財政課や、影響力のある議員へのアプローチも意識したいところです。費用対効果を数字で示す資料を準備し、査定を後押しできるようにしておきます。

    この時期に注意したいのは、事業部門の担当者がどれだけ前向きでも、査定の場では財政課から「本当に必要か」「他の手段では代替できないか」という厳しい質問が飛ぶという点です。事業部門任せにせず、査定で使える一言・一枚の資料を事前に渡しておけるかどうかで、査定を通過できるかが左右されることがあります。

    1月:首長査定・内示への備え

    首長による最終査定の時期です。ここで一度削られた予算が復活することもあるので、静観するのではなく、必要であれば追加情報を提供し続けるほうがいいでしょう。

    2〜3月:予算案公表後の初動

    予算案が公表され、審議を経て成立します。予算公開の原則により、成立した予算は速やかに住民へ公表されるため、公表直後にどの事業にいくらついたかをいち早くキャッチできるかどうかで、その後の入札やプロポーザルへの準備スピードが変わってきます。

    随時:補正予算・交付金の動きを追う

    当初予算のサイクルとは別に、補正予算や国の交付金の動きは1年を通じて起こり続けます。3・6・9・12月の議会日程や交付金の公募情報は、継続的にチェックしておく必要があります。当初予算のタイミングを逃したとしても、こちらで挽回できることがあります。

    つまずきやすいポイント

    自治体営業でよく起こる失敗を、理由とあわせて挙げておきます。

    タイミングを外した提案

    4月に商談が盛り上がっても、実際に事業化されるのは早くて翌年度、下手をすると翌々年度ということも珍しくありません。これは予算単年度主義の原則により、その年度に議決された予算以外は執行できないためです。提案が進まないとき、内容よりもまずタイミングを疑ってみる価値はあります。実際、担当者から前向きな反応をもらえたのに数か月後に連絡が途絶えるケースの多くは、担当者の熱意が冷めたのではなく、単にその年度の予算要求のタイミングに間に合わなかっただけ、ということも少なくありません。

    財政課だけへのアプローチ

    事業のアイデアを考え、予算要求資料を作るのは各事業部門であって、財政課はあくまでそれを査定する立場です。事業部門との関係づくりを飛ばして財政課に売り込んでも、そもそも要求書に載っていなければ査定の土俵にすら上がれません。財政課への説明は、あくまで事業部門が要求を出した後の”後押し”として位置づけるくらいがちょうどいいバランスです。

    予算編成方針を読んでいない提案

    多くの自治体は、その年度に何を重視するかを示す予算編成方針を公表しています。この方向性から外れた提案は、内容がどれだけ優れていても採用されにくいのが実情です。逆に言えば、予算編成方針に書かれているキーワードを提案書のなかで使うだけでも、担当者にとって「稟議を通しやすい提案」に見えることがあります。

    「予算がない」と言われて引き下がってしまう

    「予算がない」という返答を、そのまま「その事業に興味がない」と受け取って提案自体を諦めてしまうケースもよく見られます。しかし、多くの場合これは「今年度の予算にはすでに計上する枠がない」という意味であって、事業内容そのものが否定されたわけではありません。ここで引き下がるのではなく、「来年度の予算要求に向けて、どの時期に改めてご相談すればよいか」を確認できると、次のアクションにつなげやすくなります。

    単年度の商談で終わらせてしまう

    1回の商談・1回の提案で結果が出ないと諦めてしまうのも、よくあるつまずき方です。予算単年度主義がある以上、自治体営業は基本的に複数年をまたいだ関係構築が前提になります。初回の提案がその年度の予算要求に間に合わなくても、次年度の”仕込み”期に向けて関係を継続できていれば、翌年度の要求に反映される可能性は十分にあります。単発の商談として終わらせず、年間サイクルのなかで関係を継続する前提で動くことが、結果的に近道になります。

    予算要求段階の”温度感”を正確に把握できていない

    担当者が前向きだったとしても、それが「個人としての関心」なのか「部署として要求書に盛り込む予定がある」のかを混同してしまうケースもあります。予算要求資料に反映される見込みがあるかどうかは、可能な範囲で具体的に確認しておくと、その後の見通しの精度が上がります。

    情報はどこで確認できるか

    自治体ごとの予算編成の時期や重点施策は、いくつかの方法で調べられます。

    自治体公式サイト

    もっとも信頼できるのは自治体の公式サイトです。財政課のページに予算編成方針や当初予算の概要資料が公開されていることが多く、まず確認すべき一次情報といえます。あわせて、市区町村によっては予算編成の年間スケジュールそのものを公開しているケースもあるため、「(自治体名) 予算編成方針」で検索し、財政課のページを直接確認する習慣をつけておくと、対象自治体ごとの微妙な時期のズレも把握しやすくなります。財政課のページが見つけにくい場合は、トップページの「組織一覧」や「サイト内検索」から「財政課」「財政部」「予算」といった語で探すと辿り着きやすくなります。

    参照:中央区「予算編成の流れ

    過去の予算書・決算書

    過去数年分の予算書・決算書を見比べると、どの分野に力を入れてきたかという傾向もつかめます。総計予算主義の原則により、事業ごとの歳入・歳出が個別に計上されているため、比較的読み解きやすい資料です。初めて予算書を見ると、款・項・目という独特の分類やページ数の多さに戸惑うかもしれませんが、自社の事業領域に関連しそうな款・項の名称だけを絞り込んで確認すれば、全体を読み込まなくても必要な情報にはたどり着けます。

    参照:芦屋市「地方財政状況調査(決算統計)・決算カード・財政状況資料集

    議会の議事録

    議会の議事録も、住民や議員が何を問題視しているかを知る手がかりになります。多くの自治体では議会のホームページで会議録検索システムが公開されており、キーワード検索で自社の事業領域に関連する発言だけを抽出することもできます。一般質問の答弁のなかで、次年度以降の方向性について首長や担当部長が言及していることもあるため、議事録は予算編成方針が出る前の”先行指標”としても活用できます。

    参照:世田谷区「会議録検索システム

    予算編成に関する説明会・公聴の場

    自治体によっては、予算編成の途中段階でパブリックコメントを募集したり、事業者向けの説明会を開催したりすることがあります。こうした機会は数としては多くありませんが、直接担当者と接点を持てる貴重な場になるため、対象自治体の広報やホームページのお知らせ欄は定期的に確認しておくと見逃しにくくなります。

    参照:三鷹市「パブリックコメント(市民意見募集手続)

    ただし、これらの情報は自治体ごとに公開の仕方も時期もばらばらです。狙っている自治体があるなら、その自治体の情報は個別に確認しておく必要があります。複数の自治体を並行して追いかける場合は、それぞれの財政課ページをブックマークしておく、予算編成方針が公表される時期にあわせてスケジュールを組む、といった地道な運用が結局は一番確実です。

    よくある疑問

    Q1.当初予算はいつ決まるのか?

    多くの自治体では、前年度の3月議会で議決され成立します。事前議決の原則により、年度開始前に必ず議決を終える必要があるためです。検討自体はその前年の春から始まっていて、9〜10月頃に各部署の要求内容が固まっていきます。

    Q2.補正予算のスケジュールは?

    年度途中で必要に応じて組まれるもので、3月・6月・9月・12月の定例議会に合わせて提出されることが多いです。回数や時期は自治体や年度によって変わります。

    Q3.暫定予算と当初予算の違いは?

    当初予算は年度開始前に成立する本予算、暫定予算は当初予算が間に合わなかったときのつなぎです。暫定予算では新規事業への配分はほぼ期待できません。

    Q4.選挙のある年はどうなるか?

    首長や議会の選挙のタイミングによっては、予算編成方針の提示や議会審議がずれ込むことがあります。選挙が予定されている自治体には、通常より早めに動くか、選挙後の体制を見据えて動くほうが安全です。

    Q5.担当者が異動してしまったらどうすればいいか?

    自治体では数年おきの人事異動が一般的で、せっかく関係を築いた担当者が異動してしまうことは珍しくありません。この場合、後任の担当者にゼロから説明し直すことになりますが、予算要求資料や過去のやり取りの記録が部署内に引き継がれていることも多いため、異動後すぐに接点を切らさず、資料を通じて経緯を伝えられるようにしておくことが有効です。

    おわりに

    自治体予算は、実際に使われる年度のほぼ1年前から検討が始まり、地方自治法に定められた原則にのっとって、財政部門、事業部門、首長、議会という何段階もの意思決定を経て、ようやく形になります。このリズムを知らないまま提案を続けても、内容の良し悪し以前に「タイミングが合わなかった」というだけで機会を逃してしまいます。

    なかでも7〜9月の仕込みの時期と、10〜12月の査定の時期は、自治体営業の勝負どころです。年間の流れを頭に入れたうえで、月ごとにやるべきことを一つずつこなしていく。地道なようですが、それが受注への一番確実な近道だと思います。予算という仕組みは一見すると自治体側の内部事情のように感じられますが、実際にはその年間サイクルさえ理解してしまえば、外部の企業であっても十分に見通しを立てて動けるものです。今回整理した年間フローと月別のアクションを、まずは自社が今まさに関わっている自治体に当てはめるところから始めてみてください。

    全力優編集部について

    全力優は、日本初の首長向け自治体経営情報誌である、「首長マガジン」の企画・編集を手がけています。首長マガジンは2023年7月創刊、47都道府県知事・1,741市区町村長へ直接届けられる自治体経営情報誌として年4回発行しています。

    予算は取れても、首長に届いていますか?

    財政課や事業部門との関係づくりと同じくらい、実は見落とされがちなのが「首長との接点」です。予算編成方針を示すのも、最終的な予算案を決めるのも首長であり、事業部門・財政課への働きかけだけでは届かない部分があります。

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    首長マガジン編集部 kubicho magazine

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