【大河原町長インタビュー】薬剤師から商業施設ディベロッパーの代表取締役、そして町長へ

就任当初、最も力を入れたのは「大河原町の魅力創造」と「財政の立て直し」
就任前と就任後、まちに対する想いは何も変わっていない、と語る齋町長。
「フォルテができても、まだまだ本当に魅力あるまちづくりには繋がっていないという認識でいました。
このまちの持っている中心性や利便性、拠点性。
そういうポテンシャルを存分に発揮しなければいけない。
そしてそれを仙南地域全体に広げていかなければいけない。」
その方法の一つとして、仙南に人口7万数千人の中核都市を作るべく合併の仕事に取りかかりました。
「しかし残念ながら、合併市の名前や市庁舎所在地で折り合いがつかず否決されてしまいました。
その後、もう1回住民発議で合併協議がされたけれども、それもまただめで。
その時私、合併協議会の会長だったんだけどね。
悔しくてマスコミのインタビューで涙を流してしまいました。」
当時の大河原町にはもうひとつ、財政状況が非常に悪いという課題もありました。
当時の町長から引き継ぐ時に、「齋くん、申し訳ないけど役場金ないからね」と言われたといいます。
「いや、私もお金ないとこばかり歩いてきましたから、と言ったものの笑える状況ではありませんでした。
役場も経営と同じで、せめて10年の財政計画を立てられないような町ではだめだ、財政に責任を持つことが町長としての仕事だと思っていました。」
そのため、二期連続で町長を続けていますが、8年間テープカットは一度も行わなかったそうです。
つまり、お金のかかるハード事業は我慢して何もやらなかったのです。
町民からは「何もしていない」と受け止められてしまうこともありましたが、我慢の甲斐あって今では財政が安定しているといいます。
人口も子供の割合も減らないまちのこれからのビジョンは?
人口減少などの課題に頭を悩ませる自治体が多い中で、人口も減らない、子どもの数も大きく減らないという大河原町。
税収も極めて堅調に推移しており、何があっても心配ないとは言いませんが、財政調整基金もしっかり確保できているといいます。
「今後対応していくべきことは、公共施設の老朽化対応。
別に基金を作っており、今は4億2千500万。
これを5億にし、そこからお金を出し入れをする予定です。そういうことが計画的にできないと、10年の財政計画、意味を持たないんですよ。
そして、これから10年間の財政計画を見切らなきゃいけない。
新しく作るものは何と何と何。
決めたらそれ以上は作らない、という風に私なりに財政計画を見切っているつもりです。
これを確かなものにしていきたい。
他にも、大河原町が持つ中心性、拠点性、利便性という特徴を活かしていくための手立てとして、広域連携といった政策を重ねていきたい。
他の町が提案してくれたガーデンツーリズム、あるいはDMOの取り組みなど、うちの町も頑張ることによって、広域的に大きな成果に繋がると考えています。」
数字の「見える化」を徹底した役場経営
元経営者の齋町長。
数字の「見える化」を徹底して現状分析することにより、政策につなげることができると語ります。
「住民の力は、実は役場の経営にも直結しているんですよね。
例えば、健康意識が高まることによって行政コストが下がります。
保険給付が減れば、残るお金が多くなるじゃないですか。
これも経営ですよ。そこに政策をぶつけていくわけですから。
数字はいろんなことを教えてくれます。」
そして、自身の落選の憂き目にあった経験から、数字を見える化することは説明責任を果たすことにもつながると実感したと語ります。
「私は過去の8年間、数字は自分が分かっていればいいという感覚でいた。
しっかりやってきて、こんなに業績上がっているのだから町民は分かってくれるはずだと思って仕事をしてきた。
しかし落選の危機に直面したとき、実際は伝わっていなかったと初めて実感した。
それから、なぜ町長の椅子に自分が座っているのか、何を町民の皆さんに届けなければいけないのかを常に考えていますよね。
そういうものに数字は全部繋がっているので、役場はまさに経営ですよね。」
職員に問いかける、公務員としてのミッションとは?
毎月、庁議の前にマイクを持って職員に挨拶しているという齋町長。
そこでは必ず、公務員としてのミッションを伝えているといいます。
「役場は誰のためにあるんですかということ、あなたは何の目的で役場で仕事をするんですかということ。
そのことにしっかり答えを出してくださいと。
町民のためにやった仕事が喜びに繋がったらこれ以上の報酬はない、喜びの報酬を大事にしよう、ということを言い続けています。」
町長だからできる、なんてことはない。役場の仕事は全員野球。
数年で人事異動があるのが役場職員の宿命。
役場内での信頼関係はどう築いているのでしょうか?
「本当に信頼関係が作り上げられているのかというと、それはなかなか難しいのかもしれません。
でも、絶えずやっぱり言い続けていかなければいけないことがあります。
それは、”全員野球”。
要するに、誰か1人がうまくやってもヒットを打ち続けられないでしょう。
町長だからできるなんてことはないので、皆で力を合わせてやっていく。
そうすると職員が頑張って助けてくれたり、うまくやってくれたりする。
皆でやったことで「頑張ったね」と一緒に喜び合おう。
失敗しても「ドンマイ、ドンマイ」って言おうなとメッセージを送っています。
それで職員のモチベーションが上がったら、初めて成果が上がり、次に繋がっていける。
それが役場の仕事だと思っています。
そして最後にもう一つ、仕事が一番大事だと考えるな、ということも言っています。
「家族大事」でいいんだ。
家族を大事にできない人が良い仕事できるわけないから。
でも、とことん家族が大事なんじゃだめだからなって。
家族を大事にしながら仕事もやろうな、と。
このようにメッセージを送り続け、明らかに職員のモチベーション上がったと感じています。
皆、いつも本当に頑張ってくれています。」
元経営者として、数字や分析に強い齋町長。
大河原町だけではなく、周辺地域も含めた広域での発展を考えている姿や、職員や町民へ強い想いを持っている姿が印象的でした。
貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!
【大河原町長インタビュー後編】薬剤師から商業施設ディベロッパーの代表取締役、そして町長へ ← |